港南区にある地域防災拠点にて、避難所運営ゲーム「HUG」を実施しました。
地域防災拠点とは
横浜市では、指定避難所のことを地域防災拠点と呼んでいます。災害時に小中学校単位で設置されることが多く、
・家屋の倒壊などで自宅で生活できない方が一定期間避難生活を送る避難所
・在宅被災生活者向けの物資・情報供給
・家族や知人の安否確認など情報受伝達の拠点
といった指定避難所を含めた役割があり、
・防災備蓄庫の設置、防災資機材・食料等の備蓄
・被害情報等の情報受伝達手段として、各拠点にデジタル移動無線を配備
といった設備を整えています。普段は防災研修・訓練を行ったり住民の地域活動の場として使用されることが多いです。
避難所運営ゲーム「HUG」とは
避難者の情報(年齢・性別・家族構成・持病など)が書かれたカードを、避難所となる体育館や教室に見立てた紙の上に適切に配置していきます。トイレや炊き出しの場所、取材の対応など避難所で起こる様々な出来事にも対応します。HUGは、Hinanzyo(避難所)、Unei(運営)、Game(ゲーム)の頭文字を取ったもので、英語で「抱きしめる」という意味も含んでおり、避難者を優しく受け入れる避難所のイメージと重ね合わせて名付けられました。
実際の避難所を想定した、地域独自のHUG訓練
地域防災拠点の運営委員を対象に、避難所運営ゲーム(HUG)研修を実施しました。参加者は地域を中心とした3班に分かれ、避難者の受け入れや避難所運営に取り組みました。
今回は、拠点側で実際の施設や備蓄品を踏まえた独自の設定を用意していただきました。体育館や校庭のゾーニング、教室の使用目的などがあらかじめ決められ、各部屋の写真付き資料も準備されていました。
HUG経験者が少なかったこともあり、事前に施設の使い方が整理されていたことで、参加者は避難者への対応や判断に集中しやすかったようです。一方で、あらかじめ決められた配置やルールについて、その理由や背景を理解しておくことの重要性も感じました。
また、今回の配置図は通常のHUGカードと縮尺が合いませんでしたが、カードを重ねたり、付箋紙で人数を示したりするなど、各班が工夫しながら進めました。
次々と訪れる避難者、判断に追われる運営委員
HUGが始まると、次々に避難者やさまざまな出来事が発生し、各班で対応に追われる場面が見られました。最初に役割分担を決めていても、対応が増えるにつれて情報共有や記録が追いつかなくなった班もありました。また、限られたスペースに多くの避難者を受け入れる難しさから、団体旅行者など地域外からの避難者について、受け入れを断る判断をした班もありました。
高齢者には比較的手厚い対応が見られた一方で、子どもや若者への配慮が十分でない場面もありました。外国人、妊婦、乳幼児、体調不良者など、多様な避難者への対応についても課題が見えてきました。
各班の振り返りでは、判断する責任者を決めておくことや、事前のルール作りの必要性が挙げられました。特に、次々と人や出来事が押し寄せる状況を体験したことで、避難所運営の難しさを実感していただけたことは大きな成果でした。
情報を持つだけでなく、避難者に伝える
今回、3班に共通して見られた課題が、掲示板の活用でした。避難者へのお知らせを掲示するためのものですが、運営側の覚え書きとして使用したり、対応に追われて掲示まで手が回らなかったりする状況が見られました。途中で掲示板の活用を促したものの、最終的に掲示内容を十分に整理できた班は限られていました。
避難所では、運営委員が情報を把握するだけでなく、避難者が必要な情報を自分で確認できる環境を整えることが重要です。また、安否確認などで個人名を掲示する場合には、個人情報への配慮も求められます。今回の演習を通じて、情報共有の方法や掲示板の役割を、平常時から具体的に考えておく必要性が明らかになりました。
地域のつながりと、次につながる気づき
研修終了後には、参加していた公共施設の職員から、災害時には協定に基づいて武道場を開放するとの情報提供がありました。地域内の施設や関係機関との連携を知っておくことも、災害時の対応を考える上で重要です。
今回の研修では、同じ条件であっても、参加者の考え方や役割分担によって避難所運営の進め方が大きく異なることが印象的でした。HUGは、避難者を正しく配置することだけが目的ではありません。限られた情報や資源の中で判断し、その過程から地域の課題を見つけるための訓練です。今回得られた気づきを、避難所の運営ルールや役割分担の見直し、施設の安全対策、地域の関係機関との連携など、今後の具体的な備えにつなげていただければと思います。


