金沢区にて、障がい者地域自立支援に携わっている方や、福祉関係者に集まっていただき、発災時における対応について考えるグループワークを行いました。
施設ごとに異なる災害リスクと対応の難しさ
今回のグループワークでは、放課後等デイサービス、グループホーム、入所施設、相談支援、通所作業所など、さまざまな福祉関係施設の方々が参加していました。
同じ福祉分野であっても、施設の形態や利用者の特性、立地条件、建物の構造、法人の規模によって、災害時に想定される課題は大きく異なります。山の上にある施設、川の近くにある施設、一軒家、アパートの一室、複数の施設を運営している法人など、それぞれの条件によって必要な備えも変わってきます。
特に、障がいのある子どもたちを預かる放課後等デイサービスでは、利用者の年齢や障がいの種類・程度に幅があり、環境の変化によってパニックになる子どもも多いため、一般的な避難訓練や防災マニュアルをそのまま当てはめることの難しさを感じました。
また、トイレパックや非常食などを備えていても、こだわりや偏食、アレルギー、身体的な状況によって、実際には使えない・食べられない可能性があります。備蓄があることと、災害時に本当に使えることは別であり、利用者一人ひとりの特性に合わせた備えが必要だと感じました。
送迎中・外出中の連絡手段が大きな課題
ほとんどのグループで共通して挙がっていたのが、送迎中や外出中に災害が起きた場合の連絡手段です。
デイサービス系のグループでは、送迎時など、利用者と一緒にいる場面や、ドライバーだけで移動している場面など、状況ごとの連絡方法が明確に決まっていないという声がありました。どこに誰がいるのか、誰が誰に連絡するのか、どの手段を使うのかを、あらかじめ決めておく必要があると助言しました。
放課後等デイサービスでも、送迎中の被災は特に不安が大きいという意見がありました。避難所などに移動することが難しい利用者も多く、施設に戻るべきか、その場にとどまるべきか、別の安全な場所へ向かうべきか、事前に考えておく必要があります。
また、保護者への連絡手段は電話が中心という施設が多く、電話がつながらない場合の代替手段が十分に想定されていない印象を受けました。日常的にはLINEを使っている施設もあるため、安否確認だけでもLINEで伝える、災害用伝言ダイヤル171や災害用伝言板を活用するなど、連絡手段を複数用意しておくことが必要です。
相談支援のグループでも、相談員が外出中に被災する可能性が高く、職員自身の帰宅手段や利用者の安否確認方法が課題として挙がっていました。非常勤職員が防災用品の保管場所を知らないという意見もあり、職員間の情報共有も重要な課題だと感じました。
備蓄・避難・訓練は「利用者の特性」に合わせる必要がある
入所施設やグループホームでは、夜間停電を想定し、利用者がランタンを持って集合する訓練や、非常食を食べる訓練を実施している例がありました。利用者が「助けられる側」だけでなく、「助ける側」として役割を持って行動できるようにしている施設もあり、実践的な取り組みだと感じました。
一方で、放課後等デイサービスでは、宿泊を想定していない施設も多く、アルミシートや薄手の毛布はあっても、布団までは整備されていないという声がありました。食料や飲料を3日分程度備えている施設もありましたが、偏食やアレルギーがある利用者も多く、全員が同じ非常食を食べられるわけではありません。
短期間の預かり継続であれば、無理に非常食に切り替えるのではなく、普段から食べ慣れているおやつや飲み物を多めに備えておくことも現実的な方法だと考えられます。
また、避難行動についても、避難所へ移動することが必ずしも最善とは限りません。環境変化でパニックになる、非常ベルや緊急地震速報の音に反応する、動かなくなる、勝手に移動してしまう、脱走癖がある、重度障がいがあり階段昇降が難しいなど、利用者ごとに配慮すべき点があります。
地震時にはその場で身を守ることが大切ですが、火災時には速やかな避難が必要です。この違いを利用者にどう伝え、どう行動につなげるかも大きな課題だと感じました。
一律のマニュアルではなく、施設ごとのBCP訓練が必要
各施設が日頃からできる限りの備えをしている一方で、日々の業務が忙しく、防災対応が担当者の個人的な熱意や責任感に支えられている面も大きいと感じました。
避難訓練については、多くの施設で実施されているものの、火災を想定した一般的な避難訓練にとどまっているケースもあります。講師からも、BCP訓練や、非常時の連絡手段として災害用伝言ダイヤル171の運用も考慮してほしいという助言しましたが、これは非常に重要な視点です。
福祉施設では、利用者の特性や施設の状況によって、必要な対応が大きく異なります。そのため、一律のテキストやマニュアルを作るだけでは不十分であり、各施設の条件に合わせて、実際に動ける形に落とし込んでいくことが必要です。
今回のように、同じ業種や近い立場の施設同士で課題を共有する場は、とても貴重です。一般的な防災研修では、放課後等デイサービスや障がい福祉施設の具体的な悩みを共有できる機会は限られています。今回のグループワークでは、「自分たちだけが悩んでいるわけではない」という連帯感が生まれ、前向きに防災に取り組もうとする雰囲気がありました。
実際に地震が起きた想定でアラーム音が鳴るなど、臨場感のある進行を行ったことで、現場を具体的にイメージしながら話し合うことができ、実践的な防災研修になったのではないかと思います。
今後は、送迎中・外出中の連絡方法、保護者との連絡手段の複数化、非常勤職員を含めた情報共有、利用者の特性に合わせた備蓄と避難方法、災害用伝言ダイヤル171の活用など、一つひとつの課題を具体的に整理し、各施設の実情に合わせたBCP訓練につなげていくことが大切だと感じました。


