【報告】12/27-28 第3回防災教育推進連絡協議会 in 黒潮町

「防災教育推進連絡協議会」は防災教育を「防災を教える教育」だけでなく、「防災を通じた教育」という観点から捉え直し、特に“教育効果”と“地域と連携した教育実践”に着目し、今後求められる防災教育とはどうあるべきか、それを実践するために教員はどうあるべきかを議論する場として立ち上げられました。

宮城県釜石市(2014年12月開催)、和歌山県田辺市(2015年8月開催)に続く、第3回防災教育推進連絡協議会は、2015年12月27日、28日に、群馬大学(片田敏孝教授)と連携して防災教育に取り組む全国の市町村が、高知県幡多郡黒潮町に集合し、開催されました。今年度から「児童生徒の防災教育推進事業」に取り組み始めた私たちは、オブザーバー参加してきました。

会場のふるさと総合センターは、土佐西南大規模公園の中心に位置しています。広大な公園内には運動施設も多数あり、特産品のらっきょう畑も広がっています。松林があり、そこを抜けると太平洋です。

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【事例発表1】
黒潮町は、2012年3月31日に、内閣府から南海トラフの巨大地震による震度分布・津波高の推定が公表され、「最大震度7、最大津波高34.4M、2分以内に到達」という数値(全国一位)が示された町。「日本一の防災の町にするぞ!」という意気込みで、町を上げて様々な取り組みをしています。
町内には保育園4、小学校8、中学校2、高校1があり、そのうち6ヶ所が浸水域にあります。2014年度より片田先生にアドバイザー依頼し、小中学校で「黒潮町津波防災教育プログラム」による「命の教育」に取り組んでいます。「黒潮町津波防災教育プログラム」では、年間10時間以上の防災教育と6回以上の避難訓練が義務付けられました。

【解放座談会】
「防災教育と地域防災の相乗効果」をテーマに話合いがなされました。
新想定が出され、逃げることを「あきらめる」住民多数。その意識を「あきらめない」に変えるべく、また過度の不安を持った人へのケアも行いつつ、防災関連のイベントを900回以上開催し、のべ4万人の町民が参加していること。
町長から「防災思想を作ってほしい」と言われ、東日本大震災の被災地を視察し、思いを新たにして思想から具体策を作って行ったこと。
防災教育は究極の地域人材育成、何かチャレンジできるのではないかと思い、一度ふるさとから外に出た子どもたちが帰ってくる仕組みを、ということでベンチャー企業を立ち上げたこと、など伺うことができました。

日本一の津波の町から日本一の防災の町へという目標を掲げ、「あきらめない。揺れたら逃げる。より早く、より安全なところへ。」をスローガンに様々な取り組みをされています。

実際の教育現場からも、当初「逃げる訓練」をしなければと取り組んだが、子どもたちに「恐怖」を与えているだけではないかと思い、「自然と共存共栄していかなければ」と考え方の転換があったこと。
想定数値だけでは実感がわかず、東日本大震災被災地へ視察に行ったことで意識が変わった、とのお話がありました。

大人の願いは「子どもたちが生き抜くこと」、どうしたら一生懸命逃げる子に育てられるか?の問いに、今は逃げられる子でも10年後25歳になっても逃げるだろうか?命の大切さについてのリアリティの問題にたどり着く。家族の中の自分の位置づけや隣のおじいちゃんはどうなるのだろう?と具体的に考えることがリアリティにつながる。

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防災教育に取り組んだことで学力が向上した、能登町立小木中学校の取り組みを紹介。

3.11後すぐに、前校長が東北の被災地から消防団の方や避難所を運営した方を呼んで講演してもらった。中学生が「小学生に分かりやすく伝えよう」という国語の授業の中で、小学校で津波の授業をした。その辺りから中学生自身が「昼間、町にいるのは中学生と小学生、幼児とお年寄り。僕たちが何とかしなくちゃ!」と、地域の防災訓練を中学校主導でやるようになり、今では町民の半分が参加している。教員が子どもたちに、リアリティを持たせることは難しい。ただ子どもたちに「地域を大切にする気持ちを持ってもらいたい」という思いでやっている、と担任の先生。

前校長は、町には総務担当が一人いるだけ、じゃあ学校は何ができるかと考えて、思いついたことをやってきただけ。協力してほしいとお願いしたら、消防も自衛隊も快く手を貸してくれた。地域の方も「中学校がやるなら協力する」と全面的に協力してくれている。

「アクティブ・ラーニング」の導入が考えられている中、防災については正解がないので、教育教材としては秀逸なのではないかという意見も。

子どもたちが課題について主体的に考え取り組み、地域の方への活動報告など子どもたちが発表する機会を通して地域の方から褒めてもらえることで自己肯定感を高め、新たな課題に向かって取り組みづつける。小木中学校は子どもたちのやる気が連鎖的に繋がっていて、良い循環ができている。結果として学力向上にまで効果が出てきていることにも注目が集まりました。

「大好きなこの町に住み続けるためのお作法」として義務教育期間中に防災教育をして、社会に輩出していく役割(前向きな防災教育)に取組もうとしている姿勢が伝わってきました。

【事例発表2】
午後は、徳島市立津田中学校、大阪市立鶴見橋中学校、高知市立城西中学校の事例発表を伺いました。

徳島市立津田中学校では、平成17年度から2年生3年生の総合学習の時間に防災講座を設置し、希望者が受講し、生徒が企画から実施まですべて行っています。出前授業や避難訓練の手伝い、防災マップ作りにとどまらず、事前復興まちづくり計画にまで取り組んでいます。

大阪市立鶴見橋中学校では、東日本大震災を受けて教員有志のボランティア活動や生徒代表の東北視察・交流を経て、子ども防災プロジェクトチームを発足。3年間の活動を通して生徒の心の変化が見えてきました。

高知市立城西中学校では、平成26年度から龍馬プロジェクトチームを発足し、坂本龍馬の「船中八策」から「龍馬の地震への八策」を作成。様々な取り組みを「城西龍馬新聞」として発信しています。

【グループディスカッション・討論会】
解放座談会、事例発表を踏まえてグループディスカッションは、「児童生徒の心に響き、行動を変える授業とは」「地域と連携した防災教育」のテーマで行われました。各グループで活発なやりとりがなされていました。

防災教育には「我が事感」が必要で、子どもたちに対して自分と家族を見つめ直す発問ができるといいのではないか。本音を伝え合え、繋がることが大切。リアリティの観点からは地域の状況、経験者の話、環境問題にも絡めて「チーム学校」として取り組む。子どもたちが肯定される仕組みづくりが大切。

より前向きな発想ができるように流れを作る。結果的に避難訓練に繋がるような、保護者に学校に来てもらうためのイベントを企画し防災教育にいかに本気になれるか、先生の取組みが大切。今ある教育課程と防災教育をどうつなげていくか?

「こんなアプローチで子どもたちがこんな風に変わった」という事例を増やしていくことが必要。地域の人に学校に入ってもらうと可能性が広がるだろう。地域の強み、弱みを把握する。

防災教育に取り組むことで子どもたちは自ら考える力をつける。それが学力向上にもつながり、学校の安定にもつながる。

学校に根付く防災教育、地域等との連携の在り方、自校化できる取組み等、さらに工夫が必要。教師が本気になった事で、少しずつ学校の雰囲気も良い方向に変わってきたこと。

坂本龍馬の「船中八策」から、「龍馬の地震への八策」を考えた高知市立城西中学校龍馬プロジェクトチームの取組みは、郷土を知ることにもなり、さらに防災に興味を持ってもらうために有効なものが造られたのではないかと思う。

などなど・・・・話は尽きない様子で、それぞれのグループで色々な気づきがあったことが伺えました。

片田教授のまとめでは、「悲壮感のない防災教育」「子どもたちを褒めてもらえるための地域連携」「教育委員会や防災課・首長のあり方」「プログラムの自校化」、をキーワードとして受け取りました。

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【現地視察】
2日目の午前中は、現地視察。
マイクロバス2台に分乗して、まずは浜の宮地区津波避難タワーへ。土佐西南大規模公園内の複合施設「大方あかつき館」に併設されています。特徴のある階段が真っ先に目につきました。2か所の階段とスロープが設置されています。地盤の高さは8Mほどで、避難場所の高さは17M。設置されている備蓄庫には簡易トイレが収納されているとのこと。収容人数は100名。実際に上って見ましたが、季節によっては厳しい環境になると予想されます。この浜の宮地区津波避難タワーは、住宅よりも海側に設置されていることからも、避難勧告発令時に住民が真っ先に津波避難タワーに避難するかというと、難しい面もあるようです。
黒潮町内には、ここを含めて5ヶ所のタワーがあります。

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次は黒潮町缶詰製作所へ。新想定後、被害を心配して住民が転出する動きもあったことから「震災前過疎」が心配されました。町は徹底した避難対策を行うとともに、被災後も働ける場の確保を目的に黒潮町が設立した会社です。サバイバル機能も持たせ、アレルゲン不使用とのことでした。試食品は、どれもおいしかったです。ネットでも購入できます!⇒http://kuroshiocan.co.jp/

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3ヶ所目は、黒潮町立佐賀小学校、中学校、保育所一帯。裏山は急な斜面です。地震にも耐える避難路(大和田山避難広場行き)が造られているので実際に歩いてみました。登って行くにつれ、ところどころ小さな落石もあったりして、実際に巨大地震が起こった際にはどうなるのだろう?と思いました。小中学生は避難訓練で必ず登っているとのこと。保育所は、子どもたちの命を守るために移転を決定したそうです。

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【全体討論】
最後は前日の会場に集まり、総括を行いました。
参加した先生方からの感想では、
●できることからやればいい。教師が無理をしたら子どもたちもキツイ。教え込みの教育になってしまっていた、など自身の取り組みを振り返るコメントや、
●防災教育は教師が本気にならなきゃできない。教師の意識が影響する。など、教師に依存する部分が大きいこと、
●防災教育は学力に関係なく活躍できる。命をダイレクトに扱うからこそ、子どもも家庭も地域も学校もみんな真剣になる。
●防災教育を通じて地域を好きになる、それは地域貢献。「地域(大人)が子どもを守る」ではなく「子どもが地域を守る」など、子どもを中心に地域が元気になっていく可能性、また
●防災教育に取り組んで3年で偏差値が上がっている。キャリア教育にもなっている。など、防災教育があらゆる教育的要素を含んでいること。
●この会に来るとパワーがもらえる。このような横のつながりを作る機会はない、とても大切。
このような横のつながりを作る機会を望んでいることが伺えました。

僕らが目指す防災教育は、これまでやってきた従来型の防災教育をがむしゃらにやろうと言うことではない。だが未だ暗中模索している。先生方が孤軍奮闘している、今後どうやって進めていくべきか、「何を目指すべきなのか」ということを議論していきたい。これからも各学校で実践を重ね、事例を持ち寄り高め合っていってほしい。という片田先生の総括で締め括られました。
私たちの取り組んでいる「児童生徒の防災教育推進事業」に生かせる内容が満載で、とても有意義な出張となりました。

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【石田の考察】
今回、この「第3回防災教育推進連絡協議会」に参加して驚いたことは、「どこの地域でも直面している課題は同じ」だということです。
会場の先生方の声は、昨夏私たちが神奈川県の学校でヒアリング調査をした時に伺ったことと、ほとんど違いはありませんでした。
そして、一番強く感じたことは「先生方は横のつながりを求めている」ということ。
私の教員経験からも、先生方が自分たちでこのような場を作ることは不可能です。ただ、こういう場があれば参加して情報を得たいし、自身の取り組みを振り返るきっかけになるし、刺激をもらえる。何より「同じように頑張っている先生がいるんだ」と思えることが支えになります。
こういった場を作ることが、防災教育の中間支援組織として私たちが担う役割のひとつであると、再確認することができました。

また、各学校が抱える課題について、少しまとめてみます。
課題として挙げられることは、
1.教え込み(従来型)の教育になっている
2.先生が孤軍奮闘している(学校全体の取り組みになっていない)
3.子どもたちの主体的な活動
4.地域との連携
5.自校化

各学校を分類してみると、
A:現状2だが、3はできている(4もできている学校もある)
B:現状2は解決している(学校全体の取り組みになっている)が、1・3・4が課題
※5はどちらも課題

その差は、ボトムアップ(A)かトップダウン(B)かに寄るのではないか、と考えました。
ボトムアップ(A)の場合、先生が一生懸命考える・がんばる⇒それが子どもたちにも伝わり子どもたちが主体的に考えるようになる⇒子どもたちが地域の方に協力を求める⇒地域も協力してくれる、というサイクルが生まれている。自校化しやすいが一般化しにくい。
一方トップダウン(B)の場合、教育委員会がある程度の形を作っているので(一般化されている)、市内・町内・または県内の学校が同じように取り組むことができる。一般化されているので自校の特徴を見出しにくい。

上記の課題をどう解決していくのかを、私たちの取り組んでいる「児童生徒の防災教育推進事業」の中で検討を重ねていきたいと思います。

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