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9月29日(日曜日)、かながわ県民センター11階講義室1において、当ネットワーク教育・こども支援チームRily Vell主催の勉強会「のぞいてみよう、ふくしまを」が開催された。当日のスケジュールは、4、5人のグループ単位によるワークショップと、福島県の被災経験を災害教育へ活かそうと活動中の関根文恵さん(福島学グローバルネットワーク事務局長)を講師に迎えたレクチャーの二本立て。参加者は日曜の午後3時間、時にご当地銘菓を楽しんだりしながら、みっちり福島県について学んだ。

《大学生が企画》
現在、福島県とそこに暮らす皆さんがどのような復興の途上にあるのか、私たちはそこにどう関わっているのか、どうつながっていけるのか。来年春に福島訪問の「高校生パス」を企画するなど、独自のイニシアチブで活動中の大学生、加藤周人君が実現したこの勉強会は中学生、高校生、大学生が対象。当日、主催側を含めた若い世代は7人だったが、その倍の大人たちが会場に足を運び、高校生や大学生の皆さんと一緒に「福島のこれから」を考えた。
まずはワークショップ。「福島という言葉から連想するものは?」という質問でセッションはスタートしたが、「原発事故」「逃げるしかない」という、福島第1原子力発電所の事故に関わる答えが「安達太良山」、「桃」「お酒」などを抜いて半数以上を占めた。この質問の次に「福島県には何があるのか?」という、有名な観光スポットを実際に地図上にマッピングする作業があり、この時点ですでに時折頭を抱えて考え込むなど参加者は集中モード。正解でホッとしたり、知っているようで意外と知らなかったり。
これにクイズが続き、単位シーベルトの計算や自然界の放射線量など放射能に関する基本的知識問題の後、「震災後いわき市が遭った複合災害の4つとは?」という問いには「地震、津波、原発、風評」と全員が正解。しかし「いわき市のゆるキャラは?」の答えには大人グループから「フラじろう」という声も上がり、笑いを誘っていた。(正確には「本名:いわきフラ次郎 愛称:フラおじさん」。)

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《無関心という障壁》
この後、関根文恵さんが「福島の現状と未来に伝えたいこと」と題して、いま福島の人々が置かれている状況について、その困難と解決のためにはどうすればいいのか、様々な事例やデータを交えてレクチャーされた。
関根さんによれば「地震、津波、原発事故、風評被害」という4つの災害に、5つ目の「無関心」という最大の困難が加わっているのが福島県の現状だという。原発20km圏内で避難指示解除、インフラ復旧などが進む地域がある一方、平成25年4月時点で55,610人が県外避難しており、県内と合わせると154,618人が自宅に戻れず避難生活を送っているという現実がある。(データ出典:福島県災害対策本部資料)しかし時の経過とともに被災地に対するメディアの注目度や社会的な支援活動への機運は低下の傾向にある。
復興しつつある被災地の現状は県や地域によってさまざまだ。だが福島県の場合、原発事故の影響は極めて長期的かつ広範囲であるだけでなく、未知数が大きく、「余計な被爆をしないようにする」という自己防衛の対策以外に一般の人々が日常的に対応困難な災害である。他方今回の事故では、行政や専門家が「間違うことがある」、「100%信頼できない」という意識が広がっているのも事実。結果として「まず行政と東電が責任を取れ」、「福島県の復興支援はやりにくい」となり、風評被害は根強く残りながら被災者のニーズや生活実態はよく知られないまま、という現状がある。
昨今の福島第1原発の汚染水流出問題のように「ニュース」としてメディア報道が加熱することはあっても、幾多の困難を抱える被災地の現状は置き去りにされてしまう。
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《福島県から学んでほしい》
こうした状況を打破するべく、関根さんは「福島で何が起きたのかを学ぶ」→「次に災害が起きたときどうするのかを学ぶ」→「福島から未来を学ぶ」というコンセプトを基盤に活動されている。本来、地域の防災やそのための啓蒙活動は、災害支援ボランティアの活動目的の重要な一部であり、今回の勉強会もそのカテゴリーに入る。
関根さんはレクチャー冒頭、震災当日に撮影された市民映像を流し、福島第1原発周辺が津波に呑まれていく様を説明された。映像は状況をまだ把握できていない人々の笑い声なども含まれており、本当の意味で災害発生のリアルな記録となっている。メディアによる報道とはまた違った価値があり、こうした記録はもっと有効活用されていいと思われる。
未曾有の複合災害を経験した福島から「未来を学ぶ」。これは日本に限らず地球規模のニーズである。教育・交流・情報発信という活動により福島の人々がこのニーズに応えるというのは非常にまっとうな解決方法だし、社会的な「無関心」を取り除くには極めて有望な活動だ。大きく打撃を受けた観光業の活性化にもつながるだろう。
休憩時間には、いわき市の高校生、白岩春菜さんが旅行会社H.I.Sと協同で企画した観光ツアーも紹介された。白岩さんは2012年実施の「TOMODACHIサマー2012ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」に参加、米国カリフォルニア大学バークレー校にてリーダーシップと地域貢献を学び、その成果を地元の高校生による旅行企画「TOMOTRA」という形で実現した。「いわきの大人たちがどれだけすごいか知ってもらいたい」、「いわきに活気を取り戻したい」と、高校生自らがいわき市の観光名所をガイドするCM映像も取り上げられ、会場の参加者は興味津々。大人顔負けの行動力に感嘆の声も上がった。
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《神奈川県の私たちは何を知るべきか》
勉強会の締めくくりには、神奈川県、あるいは首都圏と福島県の市町村における空間放射線量データをネットで検索し比較するという作業が行われた。任意の場所を選び、調べたデータのソースも明確にし、あらかじめ用意された大きな地図にこのデータをマッピングするのだが、その際、「危険な線量値」であるかどうか判断し、それも表示する。この判断基準は指示されていないため、参加者の放射能に関する理解度、感受性、考え方が明らかになった。また、放射線量の測定方法は何か、公表している機関はどこかなど、データを理解するために必要な知識が無いと判断を誤ることも確認された。
当然のことながら、福島県でも神奈川県とまったく変わらない値のところがある一方、福島県以外に線量値が高いところも見つかった。また、同じ地点でも時期によって値が大きく異なっていることもある。「予想外の」値を見つけるといそいそと地図に向かうのはどの年代の参加者も同じで、最後は全員が地図を囲んで思い思いの感想を口にした。神奈川県は首都直下型地震の場合は甚大な災害が確定的だし、東海地震の範囲では原発所在地も関わってくるため、話題は自然と防災というトピックへと向かった。
今回企画側の大学生は3人で、講師の招聘から会場準備、イベントの進行などすべてを運営した。リーダーの加藤君は大学では史学科に在籍中で、「1000年に1度」と言われる福島県の震災に学びたいという。すでに実際に現地に足を運んでおり、高校生を連れて行くことは「彼らの人生を変える」ほどの意味があると考えている。
加藤君たちにとってこの勉強会はほんの始まりにすぎない。来年春に高校生を対象にした福島訪問バスツアーを実現するまでを一区切りに、学生たちの奮闘は続く。

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会場には全国紙の他、福島民報社など地元メディアの記事も掲示され、風評被害や地元の方々の不安などについて、知られていない側面を伝えていた。

~主催者からのひとこと~
「のぞいてみよう、ふくしまを」の勉強会を担当しました、学生スタッフの加藤です。
今回の勉強会は、より多くの方に少しでも福島県について知っていただきたく、開催しました。
また高校生や大学生といった若い人たちが、福島について思っていることを聞き出すという趣旨もありました。
そして勉強会を通してわかったことは、若い人たちにとって福島はやはり「原発事故」「放射線」といったイメージが強いということでした。
もちろん震災が起こる前の福島県は、修学旅行先の上位になるほど人気があった県であり、風評被害についてはみなさんに正しい認識をもっていただきたいと考えています。
しかし私たちは風評被害の払しょくを最終目標と定めるのではなく、福島について理解してもらい、福島の現状を「私ごと」として考えてもらう場をつくることだと考えます。
未来を作るのは人ですが、常にそこには若さも必要です。すこしでも日本の福島を理解し、考えてもらえる勉強会になるよう12月の勉強会に向けて努力していきます。
今後ともみなさまの温かいご支援よろしくお願いします。

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