私たちは東北の復興を応援しています


「東北・そして日本の沿岸を覆う? 防潮堤について正しく知ろう」と題した勉強会を10月13日午後、横浜市のかながわ県民センターで開催しました。
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かながわ311ネットワークが応援してボランティア・バスを出しているNPO法人「海ベの森をつくろう会」の活動フィールドである宮城県気仙沼市階上地区をはじめ、東北の太平洋沿岸に張り巡らせようとしている巨大防潮堤について、私たちも自分たちの問題として学ぼうというものです。

講師は首都大学東京都市環境学部の横山勝英准教授と公益財団法人日本自然保護協会保全研究部の朱宮丈晴部長のお二人。

横山准教授は「防潮堤の機能・役割 被災地の環境・くらしへの影響」と題し、最高で14.7メートルというビルの4階の高さに匹敵する巨大防潮堤構想がなぜ登場したのかという基本的な問題から、巨大防潮堤がもたらすであろう住民への影響について講演しました。
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一方、朱宮部長は「人と自然が豊かにくらす復興に向けて」とし、自然保護協会が震災前に行った海浜調査のフォローアップ調査を2012年に行った結果を踏まえ、自然の回復状況について資料を基に講演しました。
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勉強会には岡山から夜行バスで来たという大学生など44人が参加。アンケートでは、参加者の3分の2の方が今回初めて311ネットを知ったと回答しており、311ネット主催の勉強会だからとの理由ではなく、巨大防潮堤についての情報を得たいとして来られた方が多数おられたことが分かりました。このため皆熱心に質問され、予定時間を若干オーバーして終了しました。重要な問題なのに、なかなか情報を得られないという声に幾分か答えられたかもしれません。
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2人の講師の講演内容は次の通り。
横山首都大学東京都市環境学部准教授
タイトル「防潮堤の機能・役割 被災地の環境・くらしへの影響」

    1. 防潮堤の専門家も専門部局も存在しない。防波堤や離岸堤は旧運輸省港湾局が設計・建設、管理。コンクリート構造物が基本。波浪に対する力学的設計方法。河川堤防は旧建設省河川局が設計・建設、管理。土盛りが基本。海岸は両方が混在。
    2. 河川・海岸堤防は整備延長、コスト、復旧のしやすさから土堤が基本。越流しても壊れにくい技術開発。「粘り強い堤防」
    3. 海岸堤防(防潮堤)の基本構造は、越流してもコンクリートブロックが崩壊しないよう遮水シートで盛り土を覆い、その上にコンクリートブロック。
    4. 現在の津波防災の考え方は、数十年から数百年に1回発生する頻度の高い津波に対し、堤防で後背地を完全に防御。いわゆるレベル1(L1)。
    5. 行政の防潮堤に対する考え方は①災害復旧であり復興事業ではない②沿岸全域を一律の基準で整備③三陸リアス式海岸の地形特性が配慮されていない④地域が消滅寸前〜という問題。
    6. 沿岸域の暮らしについて。農林水産省「三陸沖は世界でも特に漁獲量の多い優良な漁場」。汽水域では河川水と海水が混合。親潮と黒潮がぶつかりプランクトンが豊富。気仙沼市の産業構成をみると、20%以上が沿岸中心の漁業に関わっている。巨大津波後の海の状況を調査。震災で海底のヘドロが入れ替わり「良化」している可能性。
    7. 地震で地盤が平均0.8メートル沈下。各地に干潟、湿地が出現。絶滅危惧種のニホンウナギなどが回遊。
    8. 三陸リアス復興には地域の特性に応じた対策、浸水を覚悟したまちづくり、避難行動を主体とした安全対策など。防潮堤の緊急性は低いので、住環境が整ってから高さ、場所、形状についてじっくりと話し合うことが必要。

朱宮丈晴 公益財団法人日本自然保護協会保全研究部部長
タイトル「人と自然が豊かにくらす復興に向けて」

    1. 震災後、東日本の海岸で半数以上の浜が狭まった。2012年にのべ268人の市民が参加して青森から千葉に掛けての141の砂浜、礫浜で調査。2004〜07年の調査と比較。
    2. 海岸の堤防等人工物については「特に異常は見られない」が41%だったのに対し、震災で「部分的に壊れた」が39%、「ほとんど壊れた」が20%と6割の堅牢な人工物が全半壊していることが分かった。
    3. 海岸植物の種数を調査したところ、前回調査でみられた種はすべて今回もみられ、海岸植物の種数の変化は小さいことが分かった。また海岸植物と津波の高さには明瞭な関係はみられなかった。
    4. 今回、海岸線から3キロの範囲で津波の被害があったと思われた植物群落を調査。全体として津波の影響は少なかったが、地形タイプのうち砂浜は半数が影響を受けていた。
    5. 気仙沼と南三陸での内陸部調査では、2メートル四方の範囲の湿地で4000種もの絶滅危惧種が見つかり、小さな谷戸中心にかつての群落が回復していることが分かった。生物多様性上、重要な発見。
    6. こうした湿地の中に農地復旧と復旧道路の建設計画が進んでいる。海岸堤防(防潮堤)も問題だが、河川堤防も問題。農地を戻しても農作業はできないと住民が指摘しているところに、議論もなく復旧名目で事業が進められようとしている。本来は土地利用計画は住民が決めるはず。
    7. 自然保護協会はこうした店を踏まえ今年2月4日、安倍総理以下に以下のような政策提言を行った。①海と陸との連続性を失わないこと②津波後に回復してきた動植物の生育・生息地を保全すること③復興事業においても環境アセスメントを実施すること④地域の自然を熟知している市民の意見を取り入れること。

なおフロアから「福島県いわき市久之浜海岸で既に防潮堤建設が始まっているようだが、福島県の対応はどうか?」との質問があり、2人の講師は宿題としたいとしましたが、勉強会に参加していた廣瀬俊介東北芸術工科大学大学院准教授から次のような回答がありました。勉強会報告に掲載してくださいとのことでしたので、長文となりますがそのまま引用します。防潮堤に対する柔軟な考え方、海ベの森をつくろう会と同じような樹木の選定など参考になると思います。

廣瀬俊介東北芸術工科大学大学院准教授
福島県の防潮堤について寄せられた回答

 福島県における津波被害は岩手、宮城両県に比べて小さく、区画整理を行いつつ元の地区に住みたいという方が多く、2012年にいわき市が住民の意見をまとめ、2013年より福島県はこれに対応した「防災緑地」整備について住民と会合を開きながら構想しています。
同県の防災計画は、既存堤防(一般的なコンクリート壁)を1m嵩上げして基準海面高さより7.2mとし、その内側に幅約30m、高さは海面より8.2mの盛土をして、そこへ木々を植えるものです。この盛土に木々を植えるものを「防災緑地」と呼んでいまして、私は県の委嘱を受けて久之浜、薄磯、永崎地区でそのアドバイザーを務めています。
堤防と盛土の高さは、10月13日の勉強会で紹介された宮城県気仙沼市小泉地区で計画される防潮堤の「14.7m」に比べて大分低いですが、東日本大震災における津波を基本根拠に算定していることと、土木構造物だけでは巨大水塊である津波は完全に防ぎきれないため、避難路の確保とその誘導標示の工夫から地区ごとに伝承方法を検討することまでを組み合わせて考えた県が、そう設定しています。
 なお、盛土に木々を植える理由は、災害時には津波の減衰を図り(避難にかけられる時間を少しでも増やすため)、平時は防潮・防風・騒音吸収・生態回廊的役割・軽運動や休憩の場とすることなどを担う場とするため、となります。
 住民と県の会合では、地域の歴史と自然、植生の理解を基本に、利用や管理他に関した議論が重ねられました。そのための情報提供と助言を、私ともう一名の防災緑地アドバイザーとで協力して行いました。
 私がかかわった地区では、磐城平藩の時代にもうけられた防潮林「塩除けの松」の効果を再評価の上、海側にクロマツを植え、盛土天端の管理路兼散策路の背後(陸側)あたりから徐々にタブノキやヤブツバキ、ヤマザクラなどが混じるような樹木の構成とすることに、基本方針が決まりました。
 クロマツは、できるだけ早く効果を発揮するように初めから苗木の数が多く要り、購入をして植えます。しかし、その他の木々は地区に面する丘や山の斜面から実生を移植して、生物の遺伝的多様性を守ることを検討しています。
 また、江戸時代につくられた防潮林にはやがて鳥が運んだ種が発芽して山の木が混じるようになり、人々に「スカ山(スカ/須賀は砂州の意)」と呼ばれたと伝えられますが、将来はそのようにもなっていくと考えています。

記 広報 田崎耕次

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